PROFILE

ファミリービジネス(同族企業)法務・不動産・相続・危機管理の各場面における紛争解決。
大手渉外法律事務所・外資法律事務所で訴訟案件に数多く従事。北京事務所代表。
「磯野家の相続」(商標登録・第60875791号)をはじめ著書多数。
公認会計士や税理士、宅建士などの専門家や、生命保険・不動産会社の相続担当者を対象に、各種セミナーで相続・不動産・事業承継を解説。
仕事では「今すぐ大至急」。半分の時間で勝訴を目指す弁護士。

弁護士・税理士通知・コンサルタント

早稲田大学 政経学部政治学科/朝日新聞記者/長島・大野・常松法律事務所/DLAPIPER法律事務所/北京事務所代表

趣  味 アジア離島めぐり
資  格 弁護士/税理士/宅建士/スキューバダイビング/賃貸不動産経営管理士/
一級小型船舶操縦士免許/特殊小型船舶操縦士免許
尊敬する人物 ジョン・マッケンロー
好きな言葉 ひとりでもやる、ひとりでもやめる。
得  意 誰も考えつかない発想
苦  手 100m走を二人三脚で走らされる集団行動
言  語 英語・中国語

いっしょに悩み、結果を出す。

大学卒業後、朝日新聞の記者になった。
修学旅行先のホテル火災。
出火元の部屋にいた女子高校生2名のうち1名が死亡。
意識不明でICUに運ばれたもう1人の女の子の家族を、取材した。

修学旅行先から家族に届いたばかりの絵葉書を拝見する。
中学校の卒業アルバムもお借りした。
クラスメートと笑顔で映る姿からは、無限の明るい未来しか想像できない。
部活での活躍や将来の夢など、女の子の姉は涙で声を詰まらせながらも、取材に応じてくれた。

事件発生から数日後、黒魔術遊びによる失火が原因であると報じられた。
スキャンダラスな話題にテレビや週刊誌が多数、押しかける。
自業自得といわんばかりの空気に、集団心理の危うさを感じた。
女の子が小康状態を保つなか、「ご愁傷様です」と声をかけた記者もいた。

憔悴し切った家族からなおも話を聞くために、インターホンを押し続けなければいけなかった。
玄関戸のすり硝子越しに、新生児用のベビーカーが見える。
生まれたばかりの姪を可愛がる、優しい女の子だったそうだ。
ごく普通の幸せな家庭が突然、闇夜の底に突き落とされた。

ネタをとりたいという功名心は、全くなかった。
妹の容態を心配し、食べ物が喉を通らない姉に、バナナを差し入れる。
かける言葉も浮かばなかったが、とにかく、勇気付けたかった。

2週間後、女の子は息絶えた。
いっしょに泣いた。
記者ではなく、もはや当事者になっていた。

同室のもう1人による放火・無理心中事件であることが判明したのは、数週間後のこと。
女の子は殺人事件の被害者だった。
放火殺人容疑による書類送検。
マスコミ各社の取材に応じなかった女の子の父親が、私の取材に対してだけは重い口を開いた。
世間の関心はすでに薄れ、たった数行の特ダネで取材が終わった。

ひったくりや窃盗のベタ記事を書く毎日。
ベルトコンベアで流れてくる事件を、千本ノックのように処理することに、疑問を感じ始めた。
女の子の家はどうなっているのだろう。
刑事は終わっても、民事はどうなるのだろう。

いっしょに泣き、いっしょに怒り、いっしょに笑う。
最後まで見届ける。
そんな仕事をしたいと思い、記者を辞めた。

クライアントといっしょに悩む。
もがきにもがいて、結果を出す。
苦しいときは、あの事件を思い出す。
やりたい仕事ができていることに感謝しつつ、今日も悩み続ける。